「慣れ」

[犬がいなくなった犬小屋]

いなくなった時は
それはそれはすうすうして
少し、いやかなり寒いような気がした
しかし一年経つと
もうそれほどすうすうしない
 
今では当たり前のように
私だけがここにいる
中に何もいないのが
当たり前のことのように

犬小屋

(c) Mari Awaya 
風が運んだ話たち、より
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「真夜中のみそ汁」

[最近音がうるさい冷蔵庫]

うるさいうるさいと言われながらも、気分は静かに過ごしていた真夜中のこと。毎日夜中に現れる家主が、今日も私のところへ来ました。けれども私のお腹は開けずに、お湯を湧かし私の前にあるテーブルに腰掛けました。その時の事を、人のまねをして歌に詠みました。
 
真夜中の みそ汁の湯気 ほわほわわ
彼女の憂い 一緒に飛んでけ
(字余り)

冷蔵庫

(c) Mari Awaya
風が運んだ話たち、より
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「水曜日午後二時のつぶやき」

[木の額の古い鏡]

この進化というのは
ただ人にとっての進化であって
大きく引いて見てみたら
人が出てくるまでが
進化だったのかもしれない

鏡

(c) Mari Awaya
風が運んだ話たち、より

 
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「隠れメニュー」

[おでんの屋台]

うちのはんぺんは、ただのはんぺんじゃない。味がよく染みているでもなく、大きいとか小さいでもない。それは「切ないはんぺん」なのだ。
「切ないはんぺん」は、一見普通のはんぺん。けれど、分かる人には分かるらしい。分かる人の割り合いは、意外と少ない。十人に一人くらい。分かる人は決まって、一口食べた後においしいと言うとか、はふはふ熱そうにするでもなく、
「あ」
と言ってから、動きが止まる。そして心ここにあらずと言った感じで、あははははと空笑いをする。その後は静かに、そして素早くはんぺんを食べる。大抵分かる人には連れがいるから、その人に分からぬように、「なんでもない」と言ってから。
そして「切ないはんぺん」だと分かってしまった人は、決まってもう、絶対にはんぺんを頼まない。

はんぺん

(c) Mari Awaya 
風が運んだ話たち、より


 
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「バランス」

[ユキコさんの自転車]

彼女(自転車の主人)また軽くなったの。夏からすると、ものすごく軽くなったのよ。こっちは大変よ。こぐのに力入らないし、前に一回、バランス崩してガシャンといったの。あれは痛かったわあ。
しかしなんだって、彼女はこんなに軽くなっていくのかしら。あんまり元気そうでなくなっていくみたいなのに。なのに時々、目的もなく遠くまで行ったりするの。
それで私なりに考えたんだけど、彼女きっと何かの大会に出るんじゃないかしら。それもね、シーソーってあるじゃない、ああゆうのでね、向こうに誰かが乗ってそれと同じだったら合格みたいな大会。だからきっとその誰かに合わせて軽くなろうとしているのよ。それが誰かは知らないけど。
 
まったく、たいへんよね。でももう、がしゃんはごめんだわ。

自転車

(c) Mari Awaya
風が運んだ話たち、より

 
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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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