「あたたかな夢」

もうちょっとだよ
その先で待ち合わせだから

と誰かに微笑んで言われて
わたしは夢から戻って来た

今まで会ったことのある人か
それとも出会っていない人なのかすら
もうぼやぼやしてわからない

誰だろう

でもその先が
わたしが生きている先
ということなら
あなたはもうちょっとで
やって来てくれるんだね

(c) Mari Awaya 2009
手製本「春を躍る」より

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「電話のあと」

あなた 知らないでしょ
あなたとの電話切ったあと
私がやっていること
私 口が開かないから
しごく原始的な装置で
(木でできた大きな洗濯ばさみみたいので)
口を開くようにしているの

そんなことは
別に知らなくてもいいのだけどね

でもあなた 知らないでしょ
電話先に切られるの 嫌だから
いつも私から
じゃあねって言ってるの
もっともっと話していたいけど
ほら 口開くように
練習しなくちゃならないし
私から切るの

なんてね うそだけど

あなたの最後に言う
おやすみが
あの頃みたいに
毎日聞けたらなって思うよ

(c) Mari Awaya 2008
手製本「氷のラブレター」より

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「Pancake!」

お好み焼きを焼くというので
私はホットケーキが食べたいと
ちょっと気取って
英語で言ったら
間違えて

I want to be a pancake!

私はホットケーキになりたい!

と言ってしまった

でもホットケーキは
ふわふわで温かくて
嫉妬も悲しみも
含んでいないだろうから
私はホットケーキに
なってもいいな

(c) Mari Awaya 2008
手製本「氷のラブレター」より

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「青いインコ」

最近
朝方になると声がする
寝ぼけているので夢の中のことかと思うが
どうやら外から聞こえるようである

あんたのこと、
好きよ
一生、
好きよ

それを繰り返す
朝っぱらから
どんな人が言っているのだろうかと思うけれど
布団から出たくないので
またうつうつと眠りにつく

ある日
駅から十分くらいのところにある
コンビニの掲示板に
「ピアノ教室生徒募集」
「家庭教師やります」
の張り紙といっしょに
「探しています」
の張り紙を見つける

青いインコです
頭や肩にのります
名前はチュー吉です
よく言う言葉は
「あんたのこと、好きよ」
と書いてあった

おお、こいつが声の主か
と納得し
チュー吉の写真をしばらくながめて
連絡先をメモして帰った

夜寝る前に
明日の朝チュー吉を驚かせないよう
ベランダの雨戸をちょっと開けた
ベットに横になって

あんたのこと、
すきよ
一生、
すきよ

声に出して言った
頭に浮かんできた「あんた」は
私のことをすきにはなってくれない人

でも、
あんたのこと、
すきよ
多分ずっと、
すきよ

心の中で言って
電気を消した

(c) Mari Awaya 2007
手製本「氷のラブレター」より

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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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