「片割れ」

いろんなものを日々

なくしながら生きている

なくしたと気づくものもあれば

なくしたことさえ

分からずにいるものもある

 

一昨日イヤリングを片方落とした

とても気に入っているものだったので

使った電車の沿線にある遺失物窓口に行ってみた

イヤリングの特徴を細かく伝えると

男性の職員さんは

ちょっとお待ちくださいと言って奥へ消えた

待つこと10分            

男性はプリントアウトした紙を5、6枚持って来た

 

それはこの3日間に

東京の地下鉄で落とされた

迷子のイヤリング97個の記録だった

 

誰かが

買ったばかりでうきうきと

あるいはいつものように

自分の一部として身につけ

きっと右と左が対で

そのどちらかがここに記されている

 

イヤリングたちは

暗い保管室の中でささやき合う

キラキラ ピキピキ

迎えに来てくれるかしら 

ピカピカ ティラティラ

もう一度会えるかしら 

 

けれど私は

そのリストから自分のイヤリングを

見つけることは出来なかった

そこには色と素材が書かれているくらいで

自分のものだとは特定出来なかったのだ

 

そのものを見たら

すぐに分かるのに

 

きっと出逢えたら

すぐに分かるのに

 

なくしたことを忘れて

求め探しているのかもしれない

この入り組んだ地下鉄のような迷路で

 

 

(c) Mari Awaya 2017

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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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