「眠っている間に」

ええ、もうわたくしの家は準備万端ですのよ
毎年不備のない冬眠ができるように
オオケイスーパーでなんでも買いますの
あそこよろしくってよ
 
ええ、そう、ニュースで言っていましたわね
何年か後には冬眠手当てがなくなるんですってね
当然冬眠もなくなりますわよね
でも、あれでしょう
わたくしたちが冬眠している間の外の世界は
それは美しいって言うじゃありません
わたくしたちは防寒布に家ごとくるまれてしまうから
冬眠中は外なんて見られないでございましょう
ええ、ええ、まあ眠っているから同じなんですけどね
 
きらきら光って本当にきれいだそうですよ
ほら、わたくしの親戚に
軍隊に入っているお方がいらしゃって
その方が言ってましたの
でも大変ですわよねえ
お偉い方や軍隊の方は冬眠もなさらずに働いて
 
冬眠がなくなったら
わたくしたちも見られるんですわね
どんなにきれいなんでしょう
 
春が来たらまた家にいらして下さいね
ええ、ええそれはもう、お花見でもよろしいですわね
 
ですけど春が来るたびに何かと変わっていることがあって
少し慣れるのに困りませんこと
なにやら冬眠の間にできた決まりごとが
毎年毎年増えていくじゃありませんか
ええ、でもそんなに気にするほどのものでもないでしょうけどね
わたくしって少し心配性なところがあっていけないですわね
 
ええ、ええ、あらごめんなさい
引き止めてしまって
ではよい冬眠をお迎えくださいね
おやすみなさい


(c) Mari Awaya 2006
私家版詩集「眠って眠って、春」より
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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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