「迷子のいえぞう」

いえぞう
(陶芸 太田ふみ)

いえぞうは誰にも言えなかった
じぶんが迷子になっていることを
 
いえぞうは村をしょって
旅をしてきた
もうずいぶんと昔から
でも最近
旅っていうのは
帰るところがあるから
旅に出るんじゃないか
と思いはじめてしまった
 
でもいえぞうが帰るところは
もうどこにあるかわからない
長い年月が土地を変えたし
いえぞうの記憶もおぼろけなのだ
それでも帰ろうと
ここ最近は
歩き回っていた
でもやはりわからない
 
村に住むものたちには
知らさないほうがいいだろう
僕は迷子だけど
旅をしているのも
迷子みたいなもんだ
そうしたら今までと
たいして変わらないじゃないか
なんて思えてきて
ゆっくり ゆっくり
笑顔でまた 歩き出した


(c) Mari Awaya (c) Fumi Oota
三人展「不思議ないきもの」の本より
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「はなもぐらの鏡」

はなもぐら
(陶芸 太田ふみ)

あなたの花ってほんとにきれい
 
そうなの?
わたしじぶんじゃ
あまり見えないの
あなたのも とってもきれいよ
 
そうなの?
そうだったらいいのだけど
 
なんだかうっとりした気分になるわあ
あなたの花 見ていると
 
そう?
あなたのを見ていると
なんだか元気が出てくるわよ
 
それじゃあなんだか
わたしたちって鏡みたいね
あなたがわたしを見て
どうなるかを見ていれば
わたしがどんな花を
あたまに生やしているか
わかるもの
 
ほんとね 鏡ね
ふふふふ
 
そうよ 鏡だわ
ほほほほ


(c) Mari Awaya (c) Fumi Oota
三人展「不思議ないきもの」の本より
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「うさぶろうの正体」

うさぶろう
(陶芸 太田ふみ)

ねえ、父ちゃん
うさぎは淋しいと死んじゃうって
本当なの?
 
そうなのか?父さん知らないぞ
うさぎじゃないしな
そんなことはないだろう
 
そうなの、ならよかった
でもぼくらこうしてさ
頭から耳を
そう、植物みたいな耳を生やして
うさぎのようにしているけど
うさぎじゃないよね?
だってさ、耳がなくなったら
ぼくら、なんなんだろう
 
いいかい
じぶんの正体を
ちゃんとわかっているなんて
つまらないじゃないか
みんなあんがい
わかっていないもんなんだよ
わかったようなふりをしてるんだよ
 
そうなのか
じゃあ、じぶんがなんなのか
わかっていないほうが
いいんだね
よかったよ
かんじんなことがわかって


(c) Mari Awaya (c) Fumi Oota
三人展「不思議ないきもの」の本より

 
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「のそのそエコ」

のそのそ
(陶芸 太田ふみ)

エコって知っているかい?
 
なんだい、エコって?
きみの好きなこの名前かい?
 
違うよ、ボクたちみたいのを
エコっていうらしいんだ
ゆっくり動いて
エネルギーをあんまり使わないし
動きが遅いから
背中やお腹にどんどん
草とか生えてくるだろ
そういうのをエコっていうんだよ
 
なんだい、それいいことなのかい?
 
そうだよ、今ひつようとされていて
街じゃエコ、エコってみんなが言っているよ
(本当はなんのことかよくわからないけど)
 
そうかい、それなら
うれしいなあ
ボクはこのままで
みんなによろこばれているんだあ


(c)Mari Awaya (c) Fumi Oota
三人展「不思議ないきもの」の本より

 
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「最後のメッセージ」

月とビル

ぼくこのビルの窓に
一文字ずつ書いて
残していくよ
 
月に何かたいせつなもの
忘れものしたみたいなの
それを取りに行くけど
もうここには帰って来ない
かもしれないから
 
この星にとって
重要なメッセージだよ
みんな読めるかな


(c) Mari Awaya 2015
昨日の月はとっても明るくてきれいでしたね!
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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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