「すき」

訳あって
分け入って
脇にそれて
そして戻って
 
分からなくなって
やはり訳などなくて
ただ見ているだけです
その何がいいかは
分からないけれど
 
やはりいいと思うのです
あなたのその奥にある
隠れ家に

入れなかったとしても


(c) Mari Awaya
 私家版詩集「氷のラブレター」、「あなたに好き、と言う以外は」より
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「切ないはんぺん」

電車の中で席を譲った
どうぞ どうぞ
私あんまり疲れていませんから
 
友人に好きな人を譲った
どうぞ どうぞ
私そんなに好きになっていませんから
 
渋谷の飲み屋さんに行って
今日のお勧めの
「切ないはんぺん」を頼む
 
おまたせしました
 
どうぞ どうぞ
みんな食べて
「切ないはんぺん」なんて
私はいらない
みんなは笑って
楽しそうにはんぺんを食べる
多分きっとこの中で
「切ないはんぺん」を
心から笑って食べられないのは
私だけ
 
譲ったというのは
私に対する言い訳で
泣く泣く譲るほど
そして笑って譲るにも
その人は私のものでもなんでもなかった
 
仕方のないこと
自分がいけないこと
でも、どうにもできないこと
いや、しなかったこと
 
私は「切ないはんぺん」を
精いっぱい空笑いしながら食べる
カラカラカラカラ
おいしいね
カラカラカラカラ
このはんぺん


(c) Mari Awaya
手製本「氷のラブレター」、私家版「あなたに好き、と言う以外は」

http://mari.awanomori.net/?eid=172
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「満ちる」

半円のまあるい
てらりと光る
ムースのケーキを
ひとくちずつ
食べていく

大切なものを
食べるように

あなたへの気持ちを
確かめるように

それは欠けていく
ようで
満ちていく
みたいだ


© Mari Awaya 2014
*だんだん月も、満ちていきます。
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「抵抗はむなしく、あたたかく」

冬に恋を失うのは
淋しいし寒い想いをする

足先は冷えて
手もかじかんで
鼻も冷たいし
風も身を切るようで
温かいのは
お腹に貼った
カイロくらい

でもこれから春に向かう
わたしが抵抗しても
春になって暖かになる
そして
わたしが抵抗しても
わたしはまた
いつか
恋に落ちるだろう


© Mari Awaya
詩集「あなたに好き、と言う以外は」より
http://mari.awanomori.net/?eid=172
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「みんなにやさしい」

寒いのは
単純に
今日の気温が
低いせいだ

涙が出るのは
明確に
あなたが
やさしいからだ

ただ単純な
やさしさ
それ以上
私が望むものを
含まない
やさしさ


© Mari Awaya
詩集「あなたに好き、と言う以外は」より
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詩人。物語も書いてます。
東京を中心に活動しています。詩集に「ぼくはぼっちです」、アンソロジーの詩集にも多数詩が載る。Twitter→@AwayaMari
Instagram→awa_mari39

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